イスラエルの VC 15年の歴史 2


イスラエルの VC 15年の歴史


続き

6.これまでの実績とそこから得た経験
過去のイスラエルの起業の成功というものが、VC、投資家、ファンド、スタートアップとすべての領域において、新しい会社を設立、成長させるためのファイナンス力を保持する結果となっている。


7.先を見る力、市場を作り出す力
イスラエル政府は時代を先駆けるような研究、(多分、他人から相手にもされないような研究)にも積極的なアプローチを試みる。いくつかのプログラムは、承認されたプロジェクトの研究費用であれば、プロジェクト間で費用を共有することも出来る。
また、Eureka のようなプログラムはイスラエルと他の国の間で行われる研究開発もサポートをする。国内総生産に占める R&D に占める割合が、4.55 %と突出して高い。他の研究開発先進国 Sweeden が 3.95% Finland が 3.48 % 日本が、3.20 である。日本は十分立派であると思うが。


8.税制
政府のサポートは他の部分にも及ぶ。イスラエルは最新の法律、財政システムを有しており、VC のファンドの外国人投資家には税金がかからない。


9.VC 自体の成長、インキュベーションプログラム
イスラエルのいくつかのベンチャーファンドは、扱いにくい Seed stage の会社を見つける。既に十分な製品や技術力を有し、重要顧客やパートナーを得ているようないわゆる投資対象としてはリスクが少ないような会社よりも、 Seed stage の会社を好む。私はイスラエルを神聖化するのでも何でもなく、彼らは冷静に分析して seed 段階への投資をしているように思えてならない。

こうした理由があるのは一つは若い会社は、あらゆる面で彼らをサポートする政府のインキュベーションプログラムを受けられる。こうしたプログラムは、資金的な側面だけでなく、サポートを得られ、かつ競争的な環境におきながら彼らのビジネスアイデアを発展させることが出来るのである。これらが、Hands-on 型でやる手間を自分達で行わないため、ラクチンである。


最近の政府のインキュベーションプログラムの一部はある分野に特化している。多くのインキュベータは政府よりもあらゆる面でリソースが揃っている投資家やファンドへ売られていく。そのうちのいくつかのインキュベータはTASEへ上場する流れが出来つつある。


10.Overseas VC、海外からの投資
海外のベンチャーキャピタルイスラエルの会社へ直接投資をする。なぜなら、イスラエルは、イノベーション自体が高いレベルであり続けることは、海外の VC にとってはいくつかの投資先の一つとしてイスラエルが常に魅力的な市場であり続けることへそのまま繋がる。


Benchmark、Sequoia、Greylock、はイスラエルのファンドが投資したものへ投資をしている。ま、いわゆる「あなたが投資するなら私も。」理論だ。(海外の VC が投資を始める初期では、このやり方が一番賢いのではないかと個人的には思っているが、このやり方はあまり好まれない気がする。)


一方で、、Accel Europe、Partech、Bessemer のようにイスラエルにオフィスを開き、代表者を置き、共同投資をする、海外の VC もある。他にも ベルギーの GIMV のような形式もある。イスラエルのテクノロジーカンパニーへの海外 VC の投資額はここ数年 50 %を肥える状態を維持し続けている。競争状態ではなくうまく補完関係にあるようだ。


11.Corporate VC の存在
「5.グローバルテクノロジー企業の R&D 施設の集積」で挙げた企業が、VC を持っているのはイスラエルが他の国とは多く違う点だ。彼らは非常に重要な戦略的な投資をする。corporate VC の代表としては、IntelCapital、MotorolaSiemens、J&J などは彼ら自身の将来の事業領域や必要性を基礎においた投資活動をしている。


M&A や投資活動を他社へ自社でやるほうが、中長期的な視点に立てば利益が出るだろう。他社へお願いする場合に比べ、自社で M&A 部隊を持っている場合は、スタートアップが何をしているとかという部分にフォーカスできる。社外パートナーはそこまで自社のことに詳しくはないだろう。


Cisco in Israel : http://d.hatena.ne.jp/katouseiji/20061228
Oracle in Israel : http://d.hatena.ne.jp/katouseiji/20061212


12.多様性
イスラエルには多くの投資対象として、いろいろな分野が存在する。通信、ソフトウェア、医療科学、半導体、農業、環境技術などいずれも世界的な需要があるものであるが、それらの必要性を宣伝するのがうまい。インターネットバブルに引きずられ、投資活動が停滞したがここ数年見事に回復を見せている。Life Science や、流行の Cleantech などへ転換を図れる。Cleantech などは昔からあったが、彼らは一分野をつくり、一過性のブームにしてしまうあたりが非常にうまい。こう言われだしたのは、ここ 2、3 年のことだと思う。


13.投資家の見る目
イスラエルは先端開発をするしかないのである。ここはイスラエルの見せ方のうまいところであるが、国内市場が限られ、国内資源がない以上、日本が製品化するのと同様に、先端分野へ投資するしかないく、イスラエルは市場を開発、創造するしかないのである。ただ、それをやってしまうのが彼らのすごいところなのだが。


ただ、新しい機会を求め、アジアへ目を向け始めた投資家もいる。多くの経験をつんだ投資家は、度肝を抜くような革新的な技術はそこにはなく、潜在的な巨大なアジアマーケットということで関心を抱いている。敏感な、熟練した投資家の中では、自信満々の彼らだが、次の革新的な時代を変えていくような技術はイスラエルでしか生れないと思っている投資家は多い。


革新的な技術が生れるベースが在るのはもちろんのことであるが、経験豊富や熟練した投資家達が、自分の国から革新的な技術が生れると確信しているところに彼らの本当のところの強みがあるかもしれない。


参照 : IVC YEAR BOOK 2008


( 2008 年 5 月 26 日 )
English Here