テルアビブ証券取引所の活況

katouseiji2006-11-13

テルアビブ証券取引所の活況
「 躍進するイスラエル企業 ということではない・・・」


昨年 2006 年イスラエルテルアビブ証券取引所は今までにないような形の活況のようだ。どういうことかというと、 統計をとり始めた 1995 年から 2006 年までの間で、2006 年がテルアビブ証券取引所 ( 以下 TASE ) への IPO ( Initial Public Offer )と公開企業数がいずれも最大となった。


イスラエルのヨーロッパへの投資は 2000 年のインターネットバブルの頃と投資金額は変わらないところを見ると、U.S.( アメリカ )への投資熱が冷めつつ、実際の投資額が減少しているのではないか。と見ることができるのではないか。( ヨーロッパについては後日紹介する予定 )


2000 年のインターネットバブル期に 10.7 億ドルもあり、IPO の数も 18 社であったが、2006 年は、投資額はおよそ 10 分の 1 の 1.4 億ドルにまで落ち込んでいる。公開数は 4 社だ。


その内訳だが、イスラエルの 2000 年頃の投資対象企業の分野毎の資料がないので、何ともいえないのだが ( この資料はあるだろうと思うが… )、 2006年 投資対象分野を見ると TASEIPO した企業 12 社のうち、生命科学分野が 8 社、インターネット関連、通信などが 4 社である。ちなみに、NASDAQ、AIM の IPO 企業は、LS 分野が 1 社含まれるが、残りは、インターネット関連、通信、ソフトウェア関連である。


以下が昨年、TASEIPO を果たした企業
(紹介していない企業は、紹介していく予定)

●Life Scieneces
TRD Instrum ( 10 )
MicroNet ( 8 )
MCS ( 7.8 )
Medigus ( 6.8 )
BioCancell ( 5.5 )
BSP ( 5.4 )
BioView ( 5.1 )  
Widemed ( 3 )
LifeWave ( 1.7 )
●Communications
Contact ( 8.2 )
FibroLan ( 3.1 )
●Industrial Technologies
Micronet ( 8 )
●Internet
Netex ( 3.6 )

※( )Amount Raised ( m$ ) 調達金額


米国 NASDAQ ( National Association of Securities Dealers Automated Quotations ) へは下記の 3 社。
●Communications
Allot ( 78 )
●Life Sciences
Omrix ( 39.6 )
●Internet
Incredimail ( 21.5 )
NASDAQ Small Cap

※( )Amount Raised ( m$ ) 調達金額


 ロンドン証券取引所AIM (Alternative Investment Market ) へは下記 4 社。
●Internet
Playtech ( 460 )
●Communications
MTI Wireless ( 13 )
●Software
SimiGon ( 9.9 )
●Communications
Atelis ( 1.9 )


※( )Amount Raised ( m$ ) 調達金額

補足だが、TASE への IPONASDAQAIM を比較すると、市場規模も違うし、公開を果たした規模の調達額が違うので何ともいえない。NASDAQAIMでは比較的一桁以上大きい資金が調達できるようである。また、TASEIPO をした企業のうち VC の援助を受けたのはわずか 3 社であることも注目するべき事実かもしれない。


投資の効果とか意味とかは、単純に投資合計金額と、企業数、投資分野だけで決まる問題ではないが、イスラエルは明らかに U.S. と距離をとり、ヨーロッパ、アジアとの連携をとることを国策として考えているのだろう。イスラエル単独で独自路線をとることはできないことは、国内市場が限られているために周知の事実だ。


これは、イスラエル自体がいわゆる投資のバランスを考え始めている証拠・兆候ではないか。と思っている。 LS 分野はそもそもこれまで投資を続けてきた、通信、インターネット関連技術の上に成り立つ技術ではあるが、本音は U.S. に頼らなくてもいいだろうと思っている人が多いのか?


個人的に思っていることとしては、当面日本メディアの シリコンバレー の注視は続くだろうが、シリコンバレー ( U.S. ) への投資が衰退したらいったら、どうなるのかということは誰も考えていないだろうとは思う。 ( もちろん、シリコンバレーが今後も最大の投資先の一つであることは間違いない事実 ) ただ、イスラエルの U.S. ( NASDAQ ) への投資意欲は実績が物語っているとおり、世界各地へ投資のバランスをとり始めている事実がある。


とある記事で 躍進するイスラエル企業 と伝えるが、物事の表面だけを捉えるとこういう記事しか書けなくなってしまう。 「 バランスを取り始めたイスラエル、世界への戦略は TASE から 」とでもすれば面白いのに。事実、イスラエルに国際的な本社機能を設ける会社も増えてきている。また、イスラエルは、シンガポール、韓国、台湾、中国、インドとも連携をとり始めている。


( 2008 年 5 月 3 日 更新)
English Here

( IVC Research Center YearBook 2007 / IVC Research Center )